「山本一郎 総会屋2.0事件」平成30年3月23日/東京地方裁判所/民事第23部/判決/平成29年(ワ)12886号

【判例ID】28264403
【判示事項】 【事案概要】
氏名不詳者により、被告会社を経由プロバイダとしてインターネット上に投稿された記事により名誉権を侵害されたとする原告が、上記氏名不詳者に対する損害賠償請求権の行使のために、被告会社に対し、特定電気通信役務提供者の損賠賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、上記氏名不詳者の氏名等の情報の開示を求めた件につき、原告の請求が棄却された事例。

【裁判年月日等】 平成30年3月23日/東京地方裁判所/民事第23部/判決/平成29年(ワ)12886号
【事件名】 発信者情報開示請求事件
【裁判結果】 棄却
【上訴等】 控訴
【裁判官】 鎌野真敬
【審級関連】 <控訴審>平成30年9月6日/高等裁判所/第4民事部/判決/ 平成30年(ネ)2166号 判例ID:28264404
【出典】 D1-Law.com判例体系
【重要度】 -

■28264403
東京地方裁判所
平成29年(ワ)第12886号
平成30年03月23日
東京都(以下略)
原告 X
同控訴代理人弁護士 神田知宏
東京都(以下略)
被告 株式会社Y
同代表者代表取締役 C
同控訴代理人弁護士 梅野晴一郎
同 山内貴博
同 斉藤遼太

主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録の各情報を開示せよ。
第2 事案の概要
本件は、原告が、氏名不詳者により被告を経由プロバイダとしてインターネットの「D」(http://(以下略)、以下「本件サイト」という。)に投稿された別紙投稿記事目録記載の各投稿記事(以下、番号順に「本件投稿記事1」ないし「本件投稿記事3」といい、総称して「本件各投稿記事」という。)が、原告の社会的評価を低下させ名誉権を侵害するものであると主張して、上記の氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のために、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、本件発信者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスの開示を求める事案である。

1 前提事実
(1) 被告は、電気通信事業法に基づく電気通信事業等を目的とする株式会社である。
(2) 本件発信者は、それぞれ別紙投稿記事目録の投稿日時欄記載の各日時に被告を経由プロバイダとして、本件各投稿記事を本件サイトに投稿した(甲1の1~5、甲3、4、甲5の1・2)。
(3) 被告は、本件において、法4条1項所定の「開示関係役務提供者」に該当する。
(4) 原告は、本件発信者に対して損害賠償請求等をするために、本件発信者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスの開示を求めている。

2 争点
 本件の主たる争点は、権利侵害の明白性(〈1〉同定可能性、〈2〉名誉権侵害、〈3〉違法性阻却事由の不存在)である。
(1) 原告の主張
ア 別紙「権利侵害の説明」のとおり
イ 本件発信者は、本件ブログ(本件各投稿記事を含む本件発信者による「“Q”X(X)氏の検証」と題する一連のブログ記事)の一部が意見論評だと主張している。しかし、原告は、本件ブログの部分的な記載を問題としているのではなく、本件ブログ全体の文脈として、原告が「総会屋」であり「ブラックジャーナリスト」だと結論付けている点につき、事実摘示型の名誉権侵害だと主張するものである。
 疑問文、仮定表現、疑惑形式、推論形式であっても、間接的・比喩的、婉曲的、黙示的に特定の事実が摘示されていると理解できれば、名誉権侵害の成立は肯定され、違法性阻却事由の判断においては、疑惑の存在ではなく、疑惑の中身が真実性立証の対象となる。
 しかるところ、本件発信者は、原告がブラックジャーナリストであること、総会屋であることについて何ら真実性立証をしていない。なお、真実と信じるにつき相当の理由があることは、違法性阻却事由ではなく責任阻却事由であり、発信者情報開示請求権を否定する根拠とはならない。
ウ 本件発信者は、「契約前に批判した相手について契約直後から手の平を返したように擁護に回る」行為を前提事由とする意見論評だと主張するが、かかる事実は、総会屋、ブラックジャーナリズムの定義である「批判しないことを約しての金銭授受」が反真実であることから、事実摘示としての「総会屋」、「ブラックジャーナリズム」もまた反真実である。
 仮に、「総会屋」、「ブラックジャーナリズム」が意見論評だとしても、「批判しないことを約しての金銭授受」という重要な前提事実がない以上、相当に論理の飛躍がある不合理な推論であり、かつ、原告の人身攻撃に及ぶ表現であるから、違法性阻却事由はない。

(2) 被告の主張
 ア 原告の被告に対する発信者情報開示請求が認められるためには、少なくとも侵害情報の流通によって原告の権利が侵害されたことが明らかである必要がある(法4条1項1号)。しかし、本件各投稿記事により原告の権利が侵害されたことが「明らかである」とは認められない。
 イ 本件発信者の見解は、概要、〈1〉そもそも、本件各投稿記事はいずれも原告の社会的評判を低下させるものではないから、原告の名誉を棄損せず、本件各投稿記事につき、名誉棄損による不法行為は成立しない、〈2〉仮に、本件各投稿記事が原告の名誉を棄損するものであったとしても、本件各投稿記事が公益性要件を充足し、かつ、真実性要件又は真実相当要件を充足することから、やはり本件各投稿記事につき、名誉棄損による不法行為は成立しない、というものである。
 ウ 本件発信者の見解の具体的内容は、概ね以下のとおりである。
 原告は、本件発信者が本件ブログ上で原告を総会屋ないしブラックジャーナリストと断言したという理解の下、かかる事実摘示が名誉棄損となる事実摘示型であると主張している。
 しかし、本件発信者が本件ブログで実際に行ったのは、原告が「契約前に批判した相手について契約直後から手の平を返したように擁護に回る」行為があったという事実(A)を前提に、このような原告の行為からは、原告が総会屋に類似しており、また、ブラックジャーナリズムにも類似しているという推論が可能であるとの意見・論評(B)を示して原告を批判したものであるから、意見・論評型である。
 そして、本件各投稿記事は、事実上記(A)から合理的に推認できる事項であり、意見論評としての域を到底逸脱していない。
 エ 本件発信者の見解から示された被告としては、本件各投稿記事により原告の権利が侵害されたことが「明らかである」とは判断し難い。したがって、原告の発信者情報開示請求を認めることはできない。

第3 当裁判所の判断
 1 同定可能性について
 証拠(甲1の2)によれば、本件各投稿記事において、「X」の肩書として「ブロガー、投資家、P株式会社代表取締役」などと記載され、原告の写真が掲載されていることが認められる。このことからすると、本件各投稿記事の対象とされている「X」が原告を指し示していることは明らかである。
 2 名誉権侵害について
(1) 本件ブログの概要
証拠(甲1の2~5)によれば、本件各投稿記事を含む本件ブログは、E(E‘)氏が原告を「Q」(ここでいう「(省略)」とは、「新たな」、「次世代の」といった意味で用いられていると推測される。)と呼んだことが話題になったことから、原告が本当に「総会屋」のような仕事をしているのかについて検証するとして、まず、「総会屋」につき、会社から対価を得て総会の進行を図り(与党総会屋)又は総会を混乱させてその行為を止めることへの対価を得ようとする者(野党総会屋)などと定義し、「ブラックジャーナリスト」につき、企業のスキャンダル等をネタに金銭を要求し生計を立てているジャーナリストであると定義した上で、〈1〉原告が、かつて契約関係にあった時期には応援する記事を公表していたGについて、同社と決別して以降、従前とは態度を一変させ、追及・攻撃する記事を公表するようになった事実、〈2〉原告とHとが関係を解消して以降、原告のHに対する攻撃的な言及が現れるようになった事実、〈3〉原告が、これまで攻撃的な内容の記事を公表していたIグループについて、I球団のチーム戦略室アドバイザーに就任して以降、擁護するような記事を公表するようになった事実、〈4〉Jの番組出演につき圧力があったか否かに関し記事を公表していた原告には、芸能事務所やK協会と密接な関係があった事実等を摘示し、L氏の「XのIへの中傷を抑えられると思っているのでは?笑これMトップダウン案件らしいし。」とのツイートを引用した上で、「NファンのX様が、好きでもないOのアドバイザーに就任した理由が、L氏のツイートの推測通り、M社長からの要請で砲撃停止と擁護を意図したものならば、それは間接的なブラック・ジャーナリズム、『Q』だと思います。」との推論を示し、原告の記事は「ステルスポジショントーク」(立場を明らかにしないで書かれた記事)であるとして、原告は「記事中にその立場を明記」すべきだと主張するに至っていることが認められる。
(2) 本件各投稿記事による名誉権侵害の有無について
ア 上記(1)の認定を基に、本件各投稿記事が原告の名誉権を侵害するものかどうかについて検討する。
(ア)本件投稿記事1は、前後の文脈を考慮し、一般読者の普通の注意と読み方を基準として判断すると、原告が本当に総会屋のような仕事をしているかについて、問題提起をするにとどまっているものと読むのが相当であり、原告が総会屋ないしブラックジャーナリストであるとの事実を摘示したものとはいえないから、これによって直ちに原告の社会的評価が低下するとはいえない。
(イ)本件投稿記事2は、上記の(1)の〈1〉ないし〈3〉の事実を前提として、「これは行き過ぎた懸念であるかもしれませんが、前述のようなG、H、Iの3社に対する態度の転向を考えると、次のようなことも考えられます。」とした上で、「『X砲』をやめさせるには、Iのように仕事を発注する取引先となってお金を払わなければいけないのか」、「しかし、G社やHのように関係が終わると、取引や内部にいたことで知り得たかもしれない情報による攻撃が再び始まるようになるのか」などと懸念を示すとともに、「企業の内部に食い込んで擁護したり不祥事を探る手法は、ブラック・ジャーナリズムに似ています。」との意見を表明するものであり、一般読者の普通の注意と読み方を基準として判断すると、原告の採る手法がブラックジャーナリズムに似ているとの意見論評を示したものと読むのが相当である。
 そして、本件ブログがブラックジャーナリストにつき上記(1)のとおり定義していることからすると、上記の意見論評は、原告について否定的な印象を与えるものといえるから、原告の社会的評価を低下させるものであると言わざるを得ない。
 なお、「『X砲』をやめさせるには、Iのように仕事を発注する取引先となってお金を払わなければいけないのか」の記載部分は、飽くまで懸念の表明にすぎない上、行為の主体は「I」であって、原告がIに対し批判をやめるための対価を要求したことまでは読み取れず、仮に、Iが「X砲」を恐れ、原告による批判を抑えることを意図して球団アドバイザーへの就任を要請したことが摘示されていると解したとしても(原告がそのようなIの意図を知り、批判をしないことを約して就任を受諾したとの事実が摘示されていない以上)、それだけでは原告の社会的評価が低下するとはいえない。
(ウ)本件投稿記事3は、上記(1)の〈3〉の事実を前提として、「NファンのX様が、好きでもないOのアドバイザーに就任した理由が、L氏のツイートの推測通り、M社長からの要請で砲撃停止と擁護を意図したものとするならば、それは間接的なブラック・ジャーナリズム、『Q』だと思います。」との推論を提示するものであり、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすると、仮に、原告がIのM社長からの要請により攻撃的な記事の公表中止と擁護することを意図して、I球団のアドバイザーに就任したのであれば、原告は間接的なブラックジャーナリズムないし「Q」に当たると推測される旨の意見論評を示したものと読むのが相当である。
 そして、本件ブログが総会屋及びブラックジャーナリストにつき上記(1)のとおり定義していることからすると、上記の意見論評は、仮定的な表現を用いているものの、原告について否定的な印象を与えるものといえるから、原告の社会的評価を低下させるものであると言わざるを得ない。
イ 原告は、本件各投稿記事が、原告につき、批判しないことを約して対象者から金銭を受け取る総会屋ないしブラックジャーナリストであるとの事実を摘示したものであると主張する。
 しかしながら、上記アで説示したとおり、本件投稿記事1は、原告が本当に総会屋のような仕事をしているかについて問題提起をしたにとどまるものであって、原告が総会屋ないしブラックジャーナリストであるとの事実を摘示したものではない。また、本件投稿記事2は、原告の採る手法がブラックジャーナリズムに似ていると述べるものにすぎず、そのことは証拠等をもってその存否を決することが可能な事項ではないから、原告が総会屋ないしブラックジャーナリストであるとの事実を摘示したものはいえない。さらに、本件投稿記事3は、飽くまで原告がIのM社長からの要請により攻撃的な記事の公表中止と擁護をすることを意図してI球団のアドバイザーに就任したという仮定の下で、原告は間接的なブラックジャーナリズムないし「Q」に当たるとの推論を提示するものにすぎない上、「間接的なブラックジャーナリズム」、「Q」といった概念は意味があいまいであるから、このような推論は、証拠等をもってその存否を決することが可能な事項ではなく、前後の文脈を考慮しても、原告が総会屋ないしブラックジャーナリストに当たるとの事実を摘示したものとは読み取れない。しかも、L氏のツイートの推測は、原告がIに対し批判をやめるための対価を要求したとまで推測するものではなく、飽くまでIのM社長が主体となって、原告のIへの中傷を抑えることを意図して球団アドバイザーへの就任を要請したのではないかと推測するものにとどまるものであり(それだけでは原告の社会的評価が低下するものではないことは、前述のとおりである。)、それ故に、本件投稿記事3は、L氏のツイートの推測が当てはまるとしても、原告は「間接的な」ブラックジャーナリズムないし「Q」だと推測される旨の言い回しにとどめているものと解される。
 なお、証拠(甲2)によれば、原告自身、本件各投稿記事が、原告の記事につき「ステルスポジショントーク」であるとの指摘をするものであり、「現投資先や契約先から頼まれた、当事者に私が金員を要求した、何らかの金員を私が受け取った」といった事実関係を摘示するものではないことを前提に、ブログ上で反論していることが認められ、証拠(乙1の添付資料18)によれば、本件各投稿記事を読んでコメントを寄せた読者の受け止め方も、上記と同様であることが認められる。
 以上に述べたことからすると、前後の文脈を考慮し、一般読者の普通の注意と読み方を基準に判断しても、本件各投稿記事が、原告につき、批判しないことを約して対象者から金銭を受け取る総会屋ないしブラックジャーナリストであるとの事実を摘示したものと読み取ることは困難である。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(3)以上によれば、本件投稿記事2及び3は、原告の社会的評価を低下させる意見論評に当たるから、原告の名誉権を侵害するものといえる。
3 違法性阻却事由について
(1)ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、上記行為は違法性を欠くものというべきである。
(2)これを本件についてみると、証拠(甲2、乙1~4)によれば、原告はブログによる発言が社会的に大きな注目を集める著名なブロガーであり、原告の発言がどのような背景により行われたのかという問題は、公共の利害に関する事実に係るものといえる。また、証拠(甲1の1~5)によれば、本件各投稿記事の目的は上記の問題について検証することにあるから、その投稿は専ら公益を図る目的でされたものといえる。
 そして、「原告の採る手法がブラックジャーナリズムに似ている」との意見論評、及び、「仮に、原告が、IのM社長からの要請により攻撃的な記事の公表中止と擁護をすることを意図して、I球団のアドバイザーに就任したのであれば、原告は間接的なブラックジャーナリズムないし「Q」に当たると推測される」との意見論評は、主として前記2(1)の〈3〉の事実を前提とするものであると解されるところ、証拠(乙1~4)によれば、原告は平成27年2月頃、I球団のチーム戦略室アドバイザーに就任したこと(乙1の添付資料26)、原告は平成23年から平成25年にかけて、Iグループを批判する内容の記事を公表していたが(同添付資料27~30)、上記アドバイザー就任後の平成27年9月には、Iグループを擁護する内容の記事を公表したこと(同添付資料31)、以上の事実が認められる。
 上記認定事実によれば、上記各意見論評の前提となっている事実のうち重要な部分は真実であると認められる。
 また、本件投稿記事2及び3は、いずれも人身攻撃に及ぶなどの意見論評としての域を逸脱したものとは言えない。
(3)以上によれば、本件投稿記事2及び3については違法性が阻却されるものというべきである。

4 結論

 よって、本件各投稿記事により原告の権利が侵害されたことが明らかであるとはいえず、原告の請求は、法4条1項1号の要件を欠き、理由がないから棄却することにして、主文のとおり判決する。

民事第23部
(裁判官 鎌野真敬)

発信者情報目録
 別紙投稿記事目録記載の各IPアドレスを同目録記載の各投稿日時に使用した契約者に関する情報であって、次に掲げるもの

1 氏名または名称
2 住所
3 電子メールアドレス

以上

(別紙)投稿記事目録
(別紙)権利侵害の説明

1.同定可能性
 「P株式会社代表取締役」(甲1の2)の「X」とは原告であり、原告の写真も掲載されていることから(甲1の2、甲1の3)、本件ブログが話題の対象としている「X氏」とは原告だと容易に同定可能である。
2.名誉権侵害
 本件ブログのタイトルは「“Q”X(X)氏の検証」であるところ、別紙投稿記事目録記載1の記事は「本当に「総会屋」のような仕事をしているのでしょうか」と問題提起したあと、「X氏は、上記のG社をはじめ、さまざまな企業の不正や問題を告発してきました」「そのような行為はかつてから「ブラック・ジャーナリズム」として問題視されていたことなのです」「ブラックジャーナリストとは企業のスキャンダル等をネタに金銭を要求し生計を立てているジャーナリストの総称」との前提事実を指摘の上、同目録記載2の記事で「2015年2月に、X氏がOの「チーム戦略アドバイザー」に就任したことが話題になりました」「アドバイザー就任によって、Iに関する言及が攻撃から擁護へ鮮明に態度が変わったことが確認できます」「「X砲」をやめさせるには、Iのように仕事を発注する取引先となってお金を払わなければいけないのか」「企業の内部に食い込んで擁護したり不祥事を探る手法は、ブラック・ジャーナリズムによく似ています」と指摘し、同目録記載3の記事において「好きでもないOのアドバイザーに就任した理由が、L氏のツイートの推測通り、M社長からの要請で砲撃停止と擁護を意図したものならば、それは間接的なブラック・ジャーナリズム、「Q」だと思います」と結論付けている。
 かかる投稿内容には比喩的、婉曲的な表現(最判平成9・9・9判事1618号52頁)や仮定法・疑問法(東京地判平20・8・22WestlawJapn:2008WLJPCA08228002、東京地判平21・10・19WestlawJapn:2009WLJPCA10198003)が多用されているものの、一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈(最判昭和31・7・20民集10巻8号1059頁)すると、企業が原告の追求から逃れたり、逆に擁護されたりするには、原告に仕事を発注取引先となってお金を支払う必要がある、との事実が読み取れ、そのようにして生計を立てている原告はブラックジャーナリスト、総会屋であると読み取れる。
 総会屋の活動が会社法において違法だとされていることからしても、本件ブログは原告の社会的評価を低下させ名誉権を侵害する。
3.違法性阻却事由の不存在
 しかるに、原告は投資先や契約先から追及を止めるように要請されたことも、逆に擁護するように要請されたこともなく、もちろん、原告の執筆活動に関して資金を要求したことも受け取ったこともない(甲2)。
 原告は個人投資家、作家であり「企業のスキャンダル等をネタに金銭を要求し生計を立てているジャーナリスト」、「ブラックジャーナリスト」ではなく「総会屋」ではない(甲2)。
 したがって、本件ブログに違法性阻却事由はなく名誉権侵害が明白である。

以上